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1997年1月23日(木)−2月25日(火) 実施
11:00〜19:00 
波動 96-3,1996 73×92cm 
キャンバスに和紙,ボンドによるレリーフ,鉛筆

松谷武判の黒いエロース

この画家の駆使する黒はいうところの日本の墨色ではなく、あくまでも金属的な光沢をもつ黒である。
そこには、極力、湿潤な感情移入を避けようとする志向が貫かれている。
しかし、これはかならずしも黒に対する東洋人の美意識と抵触するものではなかろう。
もし私の見方が成り立つとすれば、過去の水墨画の多くにつきまとうエモーショナリズムを徹底的に払拭した上で、かって「墨に五彩あり」といわれた理想を、全く別種の黒によって、如何に生動的に実現するか―その課題に向かって、このアーティストの最大の努力がなされている。

今のところ、この作家の制作するものには、色彩への誘惑はほとんど感じず、ますます黒に徹して極めて禁欲的である。
ビニール糊がおのずから形成する有機的・生命的な形象にに情調の湧出は最低に留め、もっぱら、金属的な黒が放つ非常な艶を魅力として、この手法にとっては至難であるが、これによってしか表現できないエロースの今日的な具現に彼は自己投企しているように見える。
                            美術評論家 瀬木慎一




 

作品制作について

接着剤ボンドは液状のビニール系糊で、キャンバスに流す際にかなり偶然性がともない、糊は水溶液のため乾燥すると有機性を帯びた形が残ります。
1960年よりこのボンドに魅せられ、糊が重力に従って垂れる力を利用してその一瞬を定着させ、時には空気を注入したり片面に寄せたり、できる形は滑らかな球状のものが主です。
その上に鉛筆で黒くなるまで描きつぶし、最小限の色、白と黒で画面は成り立っています。

鉛筆の黒は、金属性を含んだ黒でほかにはない独自な色なので使っています。
形そのものにエロティシズムが現れるのもこの糊の特長で、ボンドを流す際期待する形でもあります。
                                   松谷武判




 

素材と官能   松谷武判

1950年代後半から60年代のアンフォルメル旋風の頃、油彩以外の素材に興味を抱き何かを生み出そうとしていた。

ちょうど、市販され始めたビニール接着剤(通称、ボンド)をキャンバスに線上に垂らして非形象の作品をつくっていて出品し始めたが具体美術協会は大変厳しく、「何か人のやらんこと、おもしろい事をやらんとあかん」と、私の作品に批判的。

その頃、ある病院の検査室に友人が勤めていて、細胞組織の血小板と取り組んでいた。
微生物の有機球体に関心を持っていた私は、よくカラースライドや顕微鏡を覗かせてもらって、ヌメヌメと動いて繁殖したり、遊離する形の不思議さにひかれていた。

この形態を造形としてなんとかならないものかと日夜考えあぐね、また、具体の連中を驚かせてみたくもあった。

偶然、垂らしていたボンドが風によって表面から皮膜を作って乾いていくのに気付き、今度は意図的にボンドをキャンバス上に餅の様に丸みを持たせて流し、扇風機で急激に乾かす。
半ば乾いた時に表面を真二つに切り、キャンバスをひっくり返して置いて垂らすように乾かすと、ぱっくり口が開いた状態に仕上がる。
また、別の丸みにはストローで空気を注入し、皮膜化した表面が膨張して見事に柔軟な球体になる。
乳白色のボンドは、時間の経過とともに透明化して皮膜の中は人間の体内の様。

白く着色すれば乳房のように、あるものは火傷の火腫れ状になり、ヌメヌメと生き物の如くへばりつき始め、私の好んでいた微生物の世界は、粘液状のボンドによって実現した。

いまだにこの素材と技法でボンドを流しているが、1970年頃より、球体の表面を鉛筆で黒く塗りつぶし始めた。乳白色から黒へ、形は繁殖と遊離を繰り返している。

たまたま市販された接着剤ボンドの虜となり、素材と偶然性から始まるが、有機性に飛んだ素材と官能性感覚が合致した結果である。

                         版画芸術86 1994より



 

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ギャラリーアコスタージュ
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■ 松谷武判 ビエンナーレ展 ■
1968 第1回パリ国際版画ビエンナーレ展
パリ市立近代美術館
1969 第1回イギリス国際版画ビエンナーレ展
ブラッドフォード美術館
1969 第8回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
リュブリアナ、ユーゴスラビア

1970

第3回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
ポーランド
第2回パリ国際版画ビエンナーレ展
第7回東京国際版画ビエンナーレ展
東京国立近代美術館
1971 第9回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
1972 第36回ベニス国際ビエンナーレ版画部門出展
第1回ノルウェー国際版画ビエンナーレ
第4回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第3回イギリス国際版画ビエンナーレ展
1974 第4回イギリス国際版画ビエンナーレ展
第5回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第2回ノルウェー国際版画ビエンナーレ
1975 第11回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
1976 第5回イギリス国際版画ビエンナーレ展
第6回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第3回ノルウェー国際版画ビエンナーレ
1977 第12回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
1978 第2回ベルギー国際版画ビエンナーレ展
コンデ・ボンスクール
第7回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第4回ノルウェー国際版画ビエンナーレ
1979 第6回イギリス国際版画ビエンナーレ展
第13回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
1980 第8回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第3回ベルギー国際版画ビエンナーレ展
1981 第14回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展
1983 第1回中華民国国際版画ビエンナーレ展
台湾
1984 第10回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
第7回ノルウェー国際版画ビエンナーレ
1986 第11回クラコウ国際版画ビエンナーレ展
■ 松谷武判 受賞略歴 ■
1966 第1回フランス政府留学選抜毎日コンクール
第1等留学賞(京都)
1969 第53回カナダ版画協会展 国際ニコル賞
(トロント カナダ)
第7回オーストリア国際版画展 第3等
(ウィーン)
国際絵画フェスティバル プリ・ナショナル賞
(カーニュ・シュ・ラ・メール フランス)
1972 リエカ国際オリジナル・デッサン展 買上賞
(ユーゴスラビア)
1974 クラコウ版画ビエンナーレ展 買上賞
(ポーランド)
イギリス版画ビエンナーレ展 スコットランド賞
(ブラッドフォード)
1976 イギリス版画ビエンナーレ展 第2等賞
(ブラッドフォード)
1980 リエカ国際オリジナル・デッサン展 国際審査員賞
(ユーゴスラビア)
1983 第1回アントワープ国際版画展 大賞
(ベルギー)
1990 第1回大阪トリエンナーレ展 3等賞
(大阪)
■ 松谷武判 個展略歴 ■
1963 グタイピナコテカ(大阪)
1965 ダイワ画廊(神戸)
1968 ズニニー画廊(パリ)
1969 アリアーネ画廊(ウィーン)
1970 ラ・ユミエール画廊(パリ)
ステーション画廊(東京)
信濃橋画廊(大阪)
1971 射手座画廊(京都)
ステーション画廊(東京)
1972 カサハラ画廊(大阪)
1973 信濃橋画廊(大阪)
射手座画廊(京都)
村松画廊(東京)
ラムリー・カザレット画廊(ロンドン)with大垣
1974 ココ画廊(京都)
トアロード画廊(神戸)
1975 村松画廊(東京)
1976 ワタリ画廊(東京)
むらかみ画廊(北九州)
りべらるアート(広島)
カサハラ画廊(大阪)
1977 キタノ・サーカス画廊(神戸)
トアロード画廊(神戸)withS.W.Hayter
1978 アラン・ウーダン画廊(パリ)
ダン・ソーカー画廊(サンフランシスコ)
ギャラリーオジマ(パリ)
1979 コンコルド子島(都城)
アートスペース獏(福岡)
現代っ子センター(宮城)
マリーナ・ディンケラー画廊(ベルリン)
1980 ラ・キュウベ現代美術センター(リヨン)
S65画廊(ベルギー)
元町画廊(神戸)
ハイデブランド画廊(オーストリア)
ギャラリー212(都城)
1981 りべらるアート+ニューくわもと(広島)
スペースアデッソ(芦屋)
かねこあーとギャラリー(東京)
現代っ子センター(宮城)
1982 朝日画廊(京都)
ワタリング画廊(アムステルダム)
天画廊(福岡)
ダン・ソーカー画廊(サンフランシスコ)
スペースアデッソ(芦屋)
かねこあーとギャラリー(東京)
1983 紅画廊(京都)
マリーナ・ディンケラー画廊(ベルリン)
S65画廊(ベルギー)
大阪現代美術センター・今日の作家シリーズ(大阪)
1984 ディムプル画廊(小林)
青花画廊(長崎)
ダン・ソーカー画廊(サンフランシスコ)
1985 ロサ・トレッキー画廊(ジュネーブ)withアスリカラウゼン
モノクローム画廊(ドイツ)
ポワン・ア・ラ・リィーンニュ(パリ)
スペースアデッソ(芦屋)
かねこあーとギャラリー(東京)
1986 ジャパン・アート画廊(フランクフルト)
レイモン・コーデイエ画廊(パリ)
コンテンポラリーアートセンター(ハワイ)
現代っ子センター(宮城)
元町画廊(神戸)
1987 エスパース・ジャポン(パリ)
レエ・リシャリュム画廊+エスパース・ギャラリー・クレディ・アグリコル(ポワティエ)
ケラー画廊(パリ)
1988 パブロ・ネルダ現代美術センター(パリ)
ジャパン・アート画廊(フランクフルト)
マリーナ・ディンケラー画廊(ベルリン)
1989 アトリエ西宮(西宮)
石屋町画廊(京都)
パスカル・ポラール画廊(ブリュッセル)with大西
アギ・シュニング画廊(チューリッヒ)
アート・アクテュエル画廊(リエージュ)
アートスペース獏(福岡)
かねこあーとギャラリー(東京)
1990 FiacエディションSaga、ケラー画廊より(パリ)
スペース・アデッソ(芦屋)
1991 スズカワ画廊(広島)
ケラー画廊(パリ)
ジャパン・アート画廊(フランクフルト)
元町画廊(神戸)
1992 Cambre国立美術学校(ブリュッセル)
フランス・ボレル出版記念に参加
芦屋市立美術博物館(芦屋)
Nicaf横浜第1回アートフェア
元町画廊(神戸)
石屋町画廊(京都)
かねこあーとギャラリー(東京)
1993 27画廊(トゥルーズ)
西宮市大谷記念美術館(西宮)
パスカル・ポラール画廊(ブリュッセル)
ロサ・トレッキー画廊(ジュネーブ)
1994 椿近代画廊(東京)
トアロード画廊(神戸)
1995 ギャラリー辻(大阪)
Jメルキュウリ画廊(パリ)
ベル書店画廊(佐伯氏)
ハレルヤ製菓(徳島)
青花画廊(東京)
27画廊(トゥルーズ)with堀尾
1996 かねこあーとギャラリー(東京)
ロサ・トレッキー画廊(ジュネーブ)
ジャパン・アート画廊(フランクフルト)
1997 アコスタージュ(高松)
 


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